チャイルドシートの免除は8つだけ|祖父母の車・タクシー・帰省を条文で確認した

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チャイルドシートを載せた家族の車と、免除されるタクシー

「祖父母の車に乗せるときはどうなるのか」「帰省のときだけなら大丈夫なのか」——チャイルドシートの義務については、こうした疑問がよく出てきます。

先に結論を書きます。「他人の車だから」という理由での免除はありません。義務を負うのは車の持ち主ではなく運転する人だからです。祖父母が運転するなら、祖父母が義務を負います。

免除される場合は、道路交通法施行令で8つだけと定められています。この記事では、その条文を確認したうえで、身近な場面がどれに当たるかを整理します。

目次

義務の根拠は道路交通法第71条の3第3項

警察庁のWebサイトには、次のように書かれています。

「自動車の運転者は、チャイルドシートを使用しない6歳未満の幼児を乗せて、運転してはならないことが決められています(道路交通法第71条の3第3項)」

ここで重要なのは、主語が「自動車の運転者」だという点です。車の所有者でも、同乗している保護者でもありません。ハンドルを握っている人の義務です。

だからこそ、祖父母の車でも友人の車でも、運転する人がその義務を負います。「自分の車ではないから」は理由になりません。

対象は6歳未満です。6歳の誕生日を迎えれば法律上の義務からは外れますが、体格が小さいうちはシートベルトが正しい位置に来ないため、引き続き補助具が必要になります。

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条文の「幼児」には、年齢のほかにもう一つ条件がある

ここは意外と知られていない部分です。道路交通法で「幼児」は第14条第3項で「六歳未満の者をいう」と定義されています。しかし第71条の3では、これに読み替えが入ります。

第71条の3第2項のただし書きに、次の括弧書きがあります。

「幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この条において同じ。)」

「以下この条において同じ」とあるので、この読み替えはチャイルドシートの義務を定めた第3項にも及びます。つまり条文上の「幼児」は、6歳未満で、かつシートベルトを適切に装着できるだけの座高がない子どもということになります。

ただし実務上、これを根拠にチャイルドシートを外す判断はできません。「適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高」に達するのは、体格がかなり大きくなってからです。6歳未満でそこに届く子はまずいません。

シートベルトが正しく機能するには、肩ベルトが首ではなく肩の中央を通り、腰ベルトが腹部ではなく骨盤にかかっている必要があります。座高が足りないと、肩ベルトが首に食い込み、腰ベルトが腹部に乗るという、かえって危険な状態になります。

この読み替えは、「年齢だけで判断する条文ではない」ということを示すものと理解しておくのが現実的です。裏を返せば、6歳を過ぎて義務から外れたあとも、座高が足りなければ補助具が必要だということでもあります。

免除されるのは、政令で定められた8つだけ

法律の条文には「やむを得ない理由があるときは、この限りでない」というただし書きがあり、その中身は道路交通法施行令第26条の3の2第3項に列挙されています。条文の内容を整理したものが次の表です。

免除される場合 政令の文言(要約) 身近な例
1. 座席の構造上、固定できない その構造上幼児用補助装置を固定して用いることができない座席において幼児を乗車させるとき(他の座席で使用させられる場合を除く) 固定装置に適合しない座席しかない車。ただし他の席で使えるなら、そちらを使う必要があります
2. 座席数が足りない 運転者席以外の座席の数以上の数の者を乗車させるため、幼児の数に等しい数の装置をすべて固定して用いることができない場合(定員超過にならない場合に限る) 定員いっぱいに乗って、物理的に全員分を固定できないとき
3. 療養上・健康保持上、適当でない 負傷又は障害のため使用させることが療養上又は健康保持上適当でない幼児を乗車させるとき けがや障害があり、使用が適さないと判断される場合
4. 身体の状態により使用できない 著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に使用させることができない幼児 体格が製品の適用範囲から外れている場合
5. 授乳など日常生活上の世話 運転者以外の者が授乳その他の日常生活上の世話(装置を使用させたままでは行うことができないものに限る)を行っている幼児 走行中の授乳やおむつ替えなど、その行為の最中に限られます
6. バス・タクシー 一般旅客自動車運送事業の用に供される自動車の運転者が、当該事業に係る旅客である幼児を乗車させるとき タクシーや路線バスに乗るとき
7. 一定の有償運送 道路運送法第78条第2号又は第3号に掲げる場合に該当して人の運送の用に供される自動車(特定の者の需要に応じるものを除く) 自家用有償旅客運送など
8. 緊急搬送 応急の救護のため医療機関、官公署その他の場所へ緊急に搬送する必要がある幼児 急病やけがで急いで病院へ向かうとき

この8つ以外に免除はありません。「近所だから」「短時間だから」「子どもが泣くから」は、どれも条文にありません。

「幼児用補助装置」も条文で定義されている

条文は、チャイルドシートそのものについても定義を置いています。第71条の3第3項の括弧書きです。

「幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。)」

読み取れる条件は3つです。

  • 座席に固定して用いるものであること……抱っこや簡易的な押さえでは要件を満たしません
  • 道路運送車両法第3章および関係命令の基準に適合していること……基準に適合しない製品では義務を果たしたことになりません
  • 幼児の発育の程度に応じた形状であること……体格に合っていない製品を使っても同じです

2つ目の「基準に適合」という条件は、車のカタログにも反映されています。トヨタの主要諸元表には「チャイルドシートは汎用ISOFIX対応チャイルドシート(新保安基準適合)のみ使用できます」という注記が付いており、車側の金具も基準適合品を前提に設計されています。

おさがりや古い製品を使う場合は、基準に適合しているかを製品のラベルで確認してください。年数が経ちすぎた製品は、基準が変わっている可能性があります。

身近な場面を、条文に当てはめる

よく質問される状況を、上の8項目に当てはめて整理します。

状況 免除されるか 理由
祖父母の車に乗せる 免除されません 義務を負うのは「運転者」です。誰の車かは関係ありません
友人の車に乗せてもらう 免除されません 同上。運転する友人が義務を負います
帰省先で親の車を借りる 免除されません 同上。運転する人の義務です
タクシーに乗る 免除されます 政令第26条の3の2第3項第6号に明記されています
レンタカー・カーシェア 免除されません 一般旅客自動車運送事業ではないため、6号には当たりません
定員いっぱいに乗って固定しきれない 条件つきで免除 第2号。定員超過にならないことが条件です

タクシーは第6号に明記されています。「一般旅客自動車運送事業の用に供される自動車の運転者が、当該事業に係る旅客である幼児を乗車させるとき」という文言で、タクシーと路線バスが該当します。

一方でレンタカーやカーシェアは対象外です。これらは旅客運送事業ではなく、運転するのは自分自身だからです。借りた車で子どもを乗せるなら、チャイルドシートを用意する必要があります。レンタカー会社の多くが貸し出しに対応しているので、予約時に確認してください。

旅行先で車を借りる予定があるなら、予約の段階でチャイルドシートも一緒に申し込んでおいてください。台数に限りがあり、繁忙期は埋まることがあります。年齢や体重に合う区分のものがあるかも確認が必要です。

空港や駅で借りる場合、受け取り時に自分で取り付けることになるケースがあります。慣れていない製品を初めて扱うことになるので、時間に余裕を見ておいてください。

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「座席数が足りない」という免除は、条件が厳しい

8項目のうち、いちばん誤解されやすいのが第2号です。条文を正確に読むと、次の条件が付いています。

  • 運転者席以外の座席の数以上の数の者を乗車させるため……つまり、運転席を除く座席が全部埋まっている状態であること
  • 幼児の数に等しい数の装置のすべてを固定して用いることができない場合……必要な台数を物理的に取り付けられないこと
  • 固定して用いることができない数の幼児を乗車させるとき……免除されるのは、付けられなかった分だけ
  • 乗車人員の制限を超えない場合に限る……定員オーバーは論外

つまり「席が埋まっていて、必要な台数が物理的に載らない」という状況が揃ってはじめて、載らなかった分だけが免除されるという規定です。

空席があるのに付けていない、装置を持っていないから付けられない、といった場合は当てはまりません。「持っていない」は「固定して用いることができない」には当たらないと読むのが自然です。

この条文の存在を「5人乗りに大人3人と子ども2人なら免除される」と単純化して覚えている人がいますが、実際にはその車で何台まで固定できるかによって結論が変わります。先に何台載るかを確認しておくほうが確実です。

第1号の「その構造上固定して用いることができない座席」にも、同じく条件が付いています。括弧書きで「当該座席以外の座席において当該幼児に幼児用補助装置を使用させることができる場合を除く」とされており、他の席で使えるなら、そちらを使わなければなりません。

「この席には付けられないから」という理由が通るのは、その車のどの席にも付けられない場合だけということです。2列目に付けられるのに3列目に座らせて免除を主張する、という読み方はできません。

条文全体を通して見ると、免除規定は「どうしても物理的に無理な場合」に限定して作られていることが分かります。利便性や手間を理由にした例外は、ひとつも入っていません。

違反したときの扱い

道路交通法施行令の別表第二では、「幼児用補助装置使用義務違反」の基礎点数は1点と定められています。

反則金については、施行令の反則行為を定めた別表に「幼児用補助装置使用義務違反」の記載はありません。点数のみで、いわゆる青切符の反則金は科されない扱いです。座席ベルト装着義務違反も同じ構造になっています。

ただし、点数の軽さと危険性の大きさは別の話です。警察庁は、チャイルドシート不使用者の致死率について「適正使用者の約5.3倍」という数字を公表しています。

使用率は84.0%、5歳だけが下がっている

警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が2026年5月9日から5月31日にかけて合同で実施した全国調査では、6歳未満の使用率は全国平均84.0%(前回比+1.6ポイント)でした。

年齢層別に見ると、傾向がはっきり分かれます。

年齢層 使用率 前回調査との差
1歳未満 94.8% +1.6ポイント
1歳〜4歳 86.9% +2.1ポイント
5歳 65.7% -1.0ポイント

5歳だけが65.7%で、しかも前回より1.0ポイント下がっています。1歳未満の94.8%と比べると約30ポイントの差です。

体が大きくなって「もういらないのでは」と感じやすい時期であること、本人が嫌がるようになること、6歳という区切りが近いことなどが背景にあると考えられます。ただし5歳はまだ義務の対象内です。

もう一つ、この調査では取り付けと着座の状態も調べられています。適切に取り付けられていた割合は77.6%、幼児を適切に着座させられていた割合は58.7%でした。

区分別に見ると、乳児用は取り付け83.8%・着座59.0%、幼児用は取り付け71.9%・着座52.2%、学童用は着座65.0%です。使っていても、半分近くは正しく座らせられていないという結果になっています。

ここで注目したいのは、取り付けの適正率より着座の適正率のほうが低いという点です。幼児用では取り付け71.9%に対して着座52.2%と、20ポイント近い差があります。

取り付けは一度やれば済みますが、着座は乗せるたびに発生します。急いでいるとき、子どもが嫌がっているとき、荷物で手がふさがっているとき——毎回きちんとやるのは簡単ではありません。ハーネスの緩み、肩ベルトの高さ、股ベルトの位置は、乗せるたびに確認が必要です。

製品を買い替えるより、いま使っているものを正しく使えているかを見直すほうが効果が大きい可能性があります。取扱説明書を一度読み直す、ディーラーや自治体の点検イベントで見てもらう、といった方法があります。

祖父母の車で困らないための現実的な方法

法律上は免除されないので、祖父母の車に乗せる機会があるなら、事前に手を打っておく必要があります。考えられる方法は3つです。

1つ目は、付け替えて持っていく方法です。ISOFIX固定の製品は着脱が比較的簡単ですが、重量があるので持ち運びは楽ではありません。祖父母の車にISOFIXの金具があるかどうかも先に確認が要ります。

2つ目は、祖父母の車用にもう1台用意する方法です。費用はかかりますが、帰省のたびに付け外しをする手間がなくなります。使用頻度が高いなら現実的な選択肢です。

3つ目は、軽量な製品を1台、移動用に持っておく方法です。シートベルト固定で軽い製品なら持ち運びの負担が小さくなります。ただし祖父母の車の後席に3点式シートベルトがあるかは確認してください。

いずれの場合も、祖父母の車の年式とチャイルドシートの適合表を事前に突き合わせておくことをおすすめします。当日になって付かないことが分かると、打つ手がありません。

なお、自治体や交通安全協会がチャイルドシートの貸し出しを行っている場合があります。帰省先の自治体で短期の貸出制度がないか、事前に調べておくのも方法です。制度の有無や条件は自治体ごとに違うので、該当する市区町村のサイトで確認してください。

助手席についても触れておきます。法律は取り付ける席を指定していませんが、助手席用エアバッグとの関係で、後ろ向きの取り付けは原則として不可とされています。車の取扱説明書やチャイルドシートの説明書に明記されているので、必ず確認してください。前向きに使える体格であっても、座席を後ろまで下げるなどの条件が付きます。

まとめ:免除は8つ、「誰の車か」は関係ない

整理します。

  • 義務の主語は「自動車の運転者」。祖父母の車でも友人の車でも、運転する人が義務を負います
  • 免除は道路交通法施行令第26条の3の2第3項の8項目だけ。「近所だから」「短時間だから」は含まれません
  • タクシー・路線バスは免除されます(第6号)。レンタカー・カーシェアは免除されません
  • 「座席数が足りない」免除(第2号)は、席が埋まっていて物理的に固定できない場合に、その分だけという厳しい条件つきです
  • 違反の基礎点数は1点。反則金の別表には記載がありません
  • 条文の「幼児」は6歳未満かつシートベルトを装着できる座高がない子ども。年齢だけで決まる条文ではありません
  • 使用率は全国平均84.0%。5歳だけが65.7%で前回より低下しています

制度の話は「知らなかった」では済みにくい部分です。帰省や親族の車に乗る予定があるなら、車の年式と適合表を先に確認しておいてください。

法律は取り付ける席までは指定していません。詳しくはチャイルドシートはどの席に付ける?中央席は安全そうで装備がいちばん薄いで整理しています。

義務の対象は6歳未満ですが、向きの規定は法律にはありません。詳しくはチャイルドシートを前向きにするのはいつ?国交省の区分は体重も身長も年齢も「目安」で整理しています。

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