夏の車内で、後ろに座っている子どもだけが汗だくになっている。エアコンは効いているはずなのに、後席に風が届いていない——これは運転の仕方の問題ではなく、その車に後席用の吹き出し口がないだけかもしれません。
メーカー公式の主要装備一覧を20車種ぶん確認しました。結果、後席の空調は「独立して温度設定できる」から「何も付いていない」まで5段階に分かれていて、同じ車種でもグレードで有無が変わることが分かりました。
そして厄介なことに、名前が似ていて中身がまったく違う装備が4つあります。カタログで「リヤヒーターダクト」と書いてあっても、それは冷房ではありません。
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後席が暑いのは、風が届いていないから
まず仕組みの話をします。車のエアコンは、ダッシュボードの吹き出し口から風を出しています。前席のすぐ目の前です。
その風が後席まで届くかどうかは、車内の形と距離で決まります。コンパクトカーなら回り込みますが、3列シートのミニバンで前席から3列目までとなると、4m近く離れています。その距離を、前席の吹き出し口から出た風だけで冷やすのは無理があります。
だからメーカーは後席用の吹き出し口を用意しています。天井に埋め込むタイプ、センターコンソールの後ろに付けるタイプ、Bピラー(前後ドアのあいだの柱)に仕込むタイプなどがあります。
問題は、それが全部の車に付いているわけではないことです。そして付いていても、冷房なのか暖房なのか送風だけなのかが車種とグレードで違います。
名前が似ていて別物な4つの装備
装備表を読むときに、まずここを押さえてください。
1つ目が「リヤクーラー」。後席用の冷房です。後ろに冷たい風が出ます。これが本命です。
2つ目が「リヤヒーターダクト」。暖房の風を後席の足元へ送るための通り道です。冷房機能はありません。名前に「リヤ」と付いているので後席の空調が充実しているように見えますが、夏には何の役にも立ちません。装備表でもっとも誤解されやすい項目です。
3つ目が「サーキュレーター」。前席のエアコンが作った風を、車内で循環させるファンです。それ自体が冷やすわけではありません。前が冷えていなければ、後ろにも冷たい風は来ません。
4つ目が「リアベンチレーション」。後席への通風のことで、これも冷房そのものではありません。
つまり「リヤ」が付いていれば後席が涼しくなる、というわけではないということです。冷房が欲しいなら、探すべき語は「クーラー」または「エアコン」です。
20車種の後席空調一覧
トヨタ・ホンダが公開している主要装備一覧・主要諸元表から、後席の空調に関する記載をそのまま抜き出したものです。
| 車種 | 後席の空調 | 公式装備表の表記 |
|---|---|---|
| トヨタ アルファード | 前後左右で独立して設定できる | 前後左右独立温度コントロールフルオートエアコン。リヤエアコンコントロールパネルは全車標準 |
| ホンダ ステップワゴン(e:HEV全タイプ/ガソリンSPADA・PREMIUM LINE) | 3つのゾーンで独立 | トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンディショナー |
| ホンダ ステップワゴン(ガソリンAIR・AIR EX) | 後席は手動操作 | フロント・フルオートエアコン+リア・マニュアルクーラー |
| トヨタ ノア/ヴォクシー(上位グレード) | 後席で自動調整・冷暖房とも | リヤオートエアコン(リヤクーラー+リヤヒーター) |
| トヨタ ノア/ヴォクシー(下位グレード) | 後席は冷房のみ | フロントオートエアコン+リヤクーラー |
| ホンダ フリード(AIR EX・CROSSTAR) | 後席に冷房あり | リアクーラー |
| ホンダ フリード(AIR) | なし | リアクーラーの行に印がありません |
| トヨタ シエンタ | 送風のみ(オプション) | 天井サーキュレーター 27,500円のメーカーオプション |
| ホンダ オデッセイ/CR-V | 暖房の風のみ | リアヒーターダクト(CR-Vはリアベンチレーションも) |
| トヨタ ライズ | 暖房の風のみ | リヤヒーターダクト |
| トヨタ カローラ/プリウス | 暖房の風のみ(寒冷地仕様) | 寒冷地仕様にリヤヒーターダクト |
| トヨタ アクア/ヤリス/ヤリスクロス/ハリアー/RAV4、ホンダ ヴェゼル | 記載なし | 後席の空調に関する記載を確認できません |
上から順に、後席の快適さが下がっていきます。いちばん下の6車種には、後席の空調に関する記載がありませんでした。
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最上位は「前後左右で独立して温度を設定できる」
今回もっとも手厚かったのはアルファードです。装備表の記載は「前後左右独立温度コントロールフルオートエアコン」。運転席・助手席・後席左・後席右で、それぞれ別の温度を設定できます。
さらに「リヤエアコンコントロールパネル(時計付)」が全車標準装備と明記されています。後席に座っている人が、自分で温度と風量を操作できるということです。
次に手厚いのがステップワゴンで、「トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンディショナー」。運転席・助手席・後席の3ゾーンを独立して制御します。e:HEVは全タイプ、ガソリンはSPADAとPREMIUM LINEに標準です。
この2台に共通するのは、後席の人が自分で調整できるという点です。子どもが「暑い」と言う前に、後ろの温度を最初から別に設定しておけます。
同じ車種でも、グレードが下がると「手動」になる
ここからが本題です。後席の空調は、グレードで中身が変わります。
ステップワゴンのガソリンAIRとAIR EXは、トリプルゾーンではありません。装備表の記載は「フロント・フルオートエアコン+リア・マニュアルクーラー」。後席に冷房はありますが、自動温度調整ではなく手動操作です。
ノアとヴォクシーも同じ構造です。上位グレードは「リヤオートエアコン(リヤクーラー+リヤヒーター)」で冷暖房の両方が後席に付きますが、下位グレードは「フロントオートエアコン+リヤクーラー」——後席は冷房のみで、暖房は付きません。
冬の後席は、リヤヒーターダクトがあれば足元に暖かい風が来ます。ただし温度を後席側で調整することはできません。
フリードは、グレードによって後席に冷房そのものがない
今回いちばん驚いたのがフリードです。
装備表の「快適装備/メーター」欄に「リアクーラー」という行があり、AIR EX・CROSSTAR・スロープには標準装備の印が付いています。しかし最廉価グレードのAIRには印がありません。
つまりフリードのAIRを選ぶと、後席用の冷房が付いていないということになります。全タイプ標準装備の欄にリヤヒーターダクトはあるので、冬の暖房の風は来ます。ただし夏の冷たい風は、前席の吹き出し口から回り込んでくるぶんだけです。
フリードは3列シートで、7人乗りなら3列目まで人が座ります。その3列目に冷房が届かない構成があるということは、購入前に知っておく価値があります。見積書のグレード名を確認してください。
シエンタの「天井サーキュレーター」は冷房ではない
シエンタの装備表には「天井サーキュレーター 27,500円(消費税抜き25,000円)」という記載があります。メーカーオプションです。
名前のとおり天井に付くファンで、車内の空気を循環させます。ただしこれは送風であって、冷房ではありません。前席のエアコンが作った冷気を後ろへ送る役割です。
効果がないという話ではありません。前が十分に冷えていれば、その冷気が後ろまで届きやすくなります。ただし「後席用エアコンが付く」と考えて注文すると、期待とずれます。27,500円という金額に見合うかどうかは、後席に誰がどれくらい座るかで判断してください。
SUVとコンパクトカーには、基本的に付いていない
今回確認した範囲では、SUVとコンパクトカーに後席の空調装備はほとんどありませんでした。
ハリアー、RAV4、ヤリスクロス、ヴェゼル、アクア、ヤリス——いずれも装備表に後席の空調に関する記載を確認できませんでした。ライズには「リヤヒーターダクト」がありますが、これは暖房の風です。
理由は車内の形です。2列シートの車は前席と後席の距離が近く、前の吹き出し口から出た風が届きます。3列シートのミニバンほど深刻な問題にはなりません。
ただし「届く」と「快適」は別です。夏の炎天下に停めた車は、後席のほうが屋根と後ろのガラスから受ける熱が多く、温度が下がるのに時間がかかります。SUVはガラス面積が大きい車種も多く、その影響を受けます。
カローラとプリウスは寒冷地仕様にリヤヒーターダクトが含まれます。寒冷地仕様は冷房を強化するものではないので、夏対策として選ぶものではありません。
ガラスでも、後席の暑さは変わる
空調そのものではありませんが、装備表にはもうひとつ後席の暑さに効く項目があります。ガラスの種類です。
ステップワゴンの装備表には、全タイプ標準装備として「IRカット(遮熱)/スーパーUVカットフロントドアガラス」「IRカット(遮熱)/UVカット機能付フロントウインドウガラス」「熱線吸収/UVカット機能付プライバシーガラス(リヤドア、リヤクォーター、テールゲート)」が並んでいます。
フリードにも「360°スーパーUV・IRカットパッケージ」という記載があり、フロントからリヤまでのガラスに遮熱と紫外線カットが入っています。
IRは赤外線のことで、これが車内の温度を上げます。遮熱ガラスは、入ってくる熱そのものを減らします。エアコンで冷やすのは入ってきた熱を後から取り除く作業なので、最初から入る量が少ないほうが効率がいいという理屈です。
とくに後席は、リヤドア・リヤクォーター・テールゲートとガラスに囲まれています。前席より日射を受ける面積が広く、その分だけ暑くなります。プライバシーガラス(濃色ガラス)が後席側だけに使われているのは、見た目の理由だけではありません。
装備表で確認するなら、「IRカット」「遮熱」「熱線吸収」という語を探してください。標準装備の欄にあるか、オプションかで扱いが変わります。
冬の後席は、シートヒーターで補える車がある
ここまで夏の話をしてきましたが、冬も後席の問題があります。暖かい空気は上に行くので、足元は冷えたままになりやすいからです。
リヤヒーターダクトはこの対策で、後席の足元に暖房の風を送ります。今回の20車種では、フリード・ステップワゴン・ライズ・オデッセイ・CR-Vが標準、カローラとプリウスは寒冷地仕様に含まれていました。
それとは別に、座面から直接温める装備があります。シートヒーターです。
ステップワゴンの装備表には「シートヒーター 運転席&助手席」と「シートヒーター 2列目」が別の行で載っています。2列目のシートヒーターは上位グレードに設定されていて、後席に座る人を座面から温められます。
フリードは「運転席&助手席シートヒーター」で、2列目の記載はありませんでした。同じホンダの3列シートミニバンでも、後席の暖房の手厚さは違うということです。
チャイルドシートを使っている場合、シートヒーターの熱はチャイルドシート本体に遮られます。子ども本人には届きにくいので、この装備は付き添いの大人が座る席で効いてくると考えたほうが実態に合います。
チャイルドシートの子どもは、暑いと言えない
ここが、この装備を子育て世代が気にすべき理由です。
後ろ向きのチャイルドシートに乗っている月齢の子どもは、暑いと言えません。言えるようになっても、自分で窓を開けたり風向きを変えたりはできません。運転席からは表情も見えにくく、ルームミラーで顔が確認できない配置も珍しくありません。
加えて、子どもは体温が上がりやすく、下がりにくいとされています。体の大きさに対して体表面積の割合が大きく、外の温度の影響を受けやすいためです。汗をかく機能も発達の途中にあります。
チャイルドシート自体も影響します。背中と座面が本体に密着するので、その部分に熱がこもります。大人が同じ席に座ったときより、確実に暑い状態だと考えてください。
だからこそ、後席に冷たい風が直接届くかどうかが効いてきます。チャイルドシートを2台載せる予定なら、2列目の左右がその席になります。そこに吹き出し口があるかを、実車で確認する価値があります。
後付けで補えるかどうか
すでに車を持っていて、後席に空調がない場合の話もしておきます。
市販の車載用サーキュレーターやシートファンはあります。ただし本記事はメーカー公式の装備表をもとにしているため、市販品の効果については触れません。ここでは、装備がない車でできる工夫だけを挙げます。
乗る前に窓を開けて熱気を逃がす。炎天下に停めた車内は外気より高温になっています。エアコンを入れる前に、まず熱い空気を外へ出したほうが早く冷えます。
エアコンの吹き出し口を上に向ける。冷たい空気は下に降りるので、上向きにしたほうが車内全体に回ります。足元に向けると前席の足だけが冷えます。
後席側の窓に日よけを付ける。多くのミニバンには「後席用サンシェード」が標準またはオプションで用意されています。ノア・ヴォクシー・シエンタの装備表にも記載があります。
そして買い替えるなら、次は装備表のこの行を見てください。後席の空調は、あとから追加できない装備のひとつです。
よくある質問
Q. 装備表のどこを見れば分かりますか?
「快適装備」または「空調」の欄です。「リヤクーラー」「リヤオートエアコン」「マニュアルクーラー」のいずれかがあれば後席に冷房があります。「リヤヒーターダクト」だけの場合は暖房のみです。
Q. リヤヒーターダクトがあれば夏も涼しくなりますか?
なりません。暖房の風を後席の足元に送るための通り道です。冷房の機能はありません。
Q. 天井サーキュレーターを付ければ後席用エアコンの代わりになりますか?
なりません。前席のエアコンが作った風を循環させるものです。前が冷えていなければ後ろも冷えません。
Q. 3列目に冷房の吹き出し口はありますか?
車種によります。リヤクーラーの吹き出し口が天井のどの位置にあるかは装備表からは分かりません。実車で天井を見上げて確認してください。試乗チェックリストに確認手順をまとめています。
Q. 中古で買う場合も同じですか?
年式とグレードで変わります。同じ車種名でも装備が違うので、個体ごとに確認が必要です。装備表は年式ごとに公開されているものを見てください。中古車の販売店に「このグレードにリアクーラーは付いていますか」と聞けば、車検証と現車で確認してもらえます。
Q. 後席にエアコンがある車のほうが、燃費は悪くなりますか?
装備の重量ぶんはわずかに不利になりますが、諸元表の燃費はその装備を含んだ状態で測られています。カタログの数値をそのまま比べて構いません。むしろ後席が暑いままだと前席のエアコンを強く効かせることになり、そのほうが影響が大きくなる場面もあります。
Q. 2列シートの車なら、後席の空調は気にしなくていいですか?
3列シート車ほど深刻ではありません。ただし夏の炎天下では後席のほうが屋根と後ろのガラスから受ける熱が多く、温度が下がるまでに時間がかかります。遮熱ガラスの有無は確認する価値があります。
Q. グレードを1つ上げてでも付けるべきですか?
後席に誰がどれくらい座るかによります。チャイルドシートの子どもが毎日2列目に乗るなら、優先度は高い装備です。逆に後席をほとんど使わないなら、他の装備に予算を回したほうが生きます。
※本記事の装備状況は、トヨタ・ホンダが公開している各車の主要装備一覧・主要諸元表の記載に基づいています。「記載なし」は装備がないことを断定するものではありません。主要装備一覧は代表的な装備を載せたもので、すべてを網羅しているとは限りません。グレードや年次改良で変わるため、購入前に最新のカタログと見積書でご確認ください。
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